FXで注目のブラジルレアル

FXでブラジルレアルの取引が可能に

くりっく365でブラジル、ロシア、インド、人民元の取り扱いが始まる。これまで中国の人民元はSBI証券での取り扱いが目につく程度だし、ブラジルレアルやインドルピーについては国内で取引可能なFX業者はなかった。FXでもついに新興国通貨が取引できるとは・・・非常にうれしい限り。さっそくブラジルレアルについて解説してみたい。

リオのカーニバル

 

キャリートレードの対象になりやすい

当社の試算によれば、購買力平価で調整したレアルの理論レートは対米ドルで1.7であり、これに比べれば7月1日現在のレート1.558は割高なレベルということになる。果たして、本当にレアルは割高なのであろうか。@交易条件、A生産性の向上、B需給関係、@政策意思の各視べから検証したいと思う。

 

まず、交易条件(輸出商品1単位によって得られる外貨で輸入できる他の商品の単位数;広辞苑)であるが、交易条件の改善とは、輸出競争力の向上、すなわち、通貨高に"耐える"体力が強化されていることを意味する。

 

民間のFUNCEX(貿易研究センター財団)が発表している2011年5月時点での交易条件指数は129(2006年平均=100、小数点以下四捨五入、以下同様)と大幅に改善している。輸出の指数が183と輸入の指数の142に対し大きく上昇している。

 

輸出の中身を見ると、工業製品が146と輸入の指数とほぼ同じであるのに対し、一次産品が237と大きく上昇している。その内訳(2011年第1四半期)を見れば、鉄鋼関連164、農畜産物220、鉱物資源324と世界的な資源価格高騰が大きな要因であることがわかる。今後も、新興国の成長に伴う資源の需要増が期待できる一方、ブラジルには鉄鉱石、石油の増産、農産物の供給拡大余力があり、長期的に見て交易条件が悪化する要因は見当たらない。

 

次に生産性向上の影響について検証する。現在のレアルの実質実効為替レートが過去10年間の平均値から約45%上昇しているのに対し、購買力平価調整後GDPを基に労働生産性の向上分を調整した上昇幅は約19%に止まっている。生産性の変化を勘案すれば、レアルは実質的にはそれほど大幅に上昇しているわけではないことを示している。

 

さらに視点を変えて、需給面からレアル相場を検証してみる。レアルの変動は、資本移動に因るところが大きい。とくに、名目、実質ともに金利水準が高く、キャリートレードの対象になりやすい。個人投資家を中心に日本からの債券投資は約2兆円と多額であるが、現物への投資のみならず、デリバティブでの投資も活発である。

 

日本で人気がある通貨選択型投信の過半はレアルヘの投資であり、レアルに交換するためNDF(相対のデリバティブ契約)を利用しているが、この残高だけで5兆円超となっている。

レアル安にはなりがたい

また、欧米機関投資家はブラジルの取引所に上場している米ドル/レアルの先物取引を多く利用しており、その残高は1.8兆円程度の規模であり、潜在的にはすべて将来の通貨レアル売り要因である。現在の状況では、レアル売りの要因(経済の急減速、ブラジルと先進国の金利差の大幅縮小)が具現化する可能性は低いと思われるが、万一、このような事態になった時の需給関係についての検討はしておく必要がある。

 

まずは外貨準備の規模である。中日露には及ばないものの、潤沢な水準(2011年6月末現在で約27兆円相当)にある。一方、日本にてあまり知られていないのがブラジル輸出業者の輸出代金決済の仕組みである。輸出業者は輸出代金(外貨)全額をすぐに本国に送金させずに、一部を国外にプールし、レアルが弱くなるタイミングを待って交換を行っている。 2010年末から2011年初めにかけて、このプール額は1.6兆円相当を超える高い水準まで膨れ上がり、現在でも1兆円近い水準にある。これらはレアルが弱くなった場合のレアルの買い支え要因となりうる。この海外滞留資金と潤沢な外貨準備の存在により、一方的なレアル安という事態は起こりにくいと考えられる。

 

最後にブラジルの政策意思の面から考察を加えたい。資源高、好調な内需によりインフレが加速している。政府にとってレアル高はインフレ抑制というメリットがあり、積極的にレアル安に誘導する理由は弱くなっていると言える。

 

まとめると、レアルに割高感はあるが、実態は表面的な数値ほどではなく、また、万一、レアルが大きく売られる局面となっても、中銀、輸出業者など潜在的なレアルの買い手が控えており、一方的なレアル安にはなりがたいと思われる。

政府・日銀の介入が行われた木曜日に、匿名の米当局者は「米国は日本の為替介入を支持しなかった」と発言しているほか、トリシェECB総裁も「介入は多国間でのコンセンサスと決定に基づいて実施されるべき。実施されたことは多国間の決定ではなかった」と日本の介入に批判的な見解を述べており、3月の東日本大震災直後と違って、今回は欧米の支持を得られなかったことがうかがえる。与謝野経済財政担当相は為替介入について「1回限りと考えるのは早計」と発言し、五十嵐財務副大臣も介入について「これで終わったわけではないので、不自然な動きがあったときはまた発動される」と発言し、今後も介入を継続する可能性を示唆している。ただし、先週のような巨額介入を繰り返せば「輸出企業への補助金」との批判が強まる可能性もある。FX投資家に心強いニュースが待たれる。